僕には秘密がある。


普通の人にはない、妙な能力を持っているのだ。
妙というか、変というか、しょうもないわりにやっかいというか……ともかくまあ、超能力というにはショボい、そんな格好いい呼び方をしては申し訳ないような能力で。
まあ、普通の人に言うようなものじゃないし、言って面倒なことになるのもいやだから、秘密にしている。

「おはよう……ございます」

六月。
教育実習初日の朝は、梅雨の中休み。
僕を呼び止めたのは、3人組の女の子たち。


「筧さん、先生だったんですか。ちっとも知りませんでした」

そのうちふたりは顔見知りで、ひとりとは、初対面。
これはまずいぞ気を付けないと、と思ってしまったのは他でもない。
ふたりと顔を見知った「とあるところ」が、その「秘密」と関係あったからだ。

僕やふたりのように、妙な能力を持ち、そしてそれを秘密にしている人間は、お仲間同士集まって、団体を結成している。
ふたりとは、そこでの顔見知りなのである。いや、せいぜい何度か挨拶を交わしたことのある程度の顔見知りなんだけど、とりあえずそれはいい。

残るひとり、帽子をかぶった明るい笑顔の女の子とは初対面。つまりお仲間じゃない、普通の人だ。
ふたりと知り合った場所が場所だけに、下手なことは言えない。
これはまずいぞ気を付けないと、はそんなわけだった。

ところが、その帽子の女の子。
普通の人なのに、「秘密」のことを知っていたものだから、予想もしていなかった展開に。

「先生っ、魔法を教えてくださいっ」

秘密じゃないじゃんそれじゃ! と叫ぶ間もなく──。

教育実習生の僕と、3人の女の子たちのつきあいははじまり。
休み時間に、放課後に、彼女たちは社会科準備室へと遊びに来てくれる。
二週間だけ「先生」で、二週間だけ「生徒」で、そして秘密を共有する「お仲間」で。
はじめて経験するそんな時間はとても楽しく、また同時に、いくつかの懸念を僕に覚えさせる。
実習生とはいえ先生が、特定の生徒と仲良くしていいものなのだろうか?
「秘密」を持つ人間が、普通の人とこんな話してていいものなのだろうか?

でも、嬉しさは、楽しさは、止まらず。

六月の雨打つ傘の下、昼休みの社会科準備室、放課後の夕食会。
おしゃべりに興じ、いっしょにお弁当を食べ、いっしょに笑って。
そして。